出生数が過去最低を記録、2070年の日本のかたち

6月2日に厚生労働省が発表した「人口動態統計(概数)」によると、令和4年の出生数は77 万747 人で、前年の 81 万 1622 人より4万 875 人減少しました。また、合計特殊出生率 は 1.26 で、前年の 1.30 より低下しています。出生数の年次推移をみると、昭和 24 年の 269 万 6638 人をピークに、昭和 50 年以降は減少と増加を繰り返しながら減少傾向が続いており、平成 27 年は 5 年ぶりに増加しましたが、平成 28年から再び減少しています。

死亡数は 156 万 8961 人で、前年の 143 万 9856 人より 12 万 9105 人増加しています。出生数と死亡数の差である自然増減数は△79 万 8214 人で、前年の△62 万 8234 人より 16 万9980 人減少し、16 年連続で減少かつ低下しています。また、自然増減数は、全ての都道府県で減少しています。令和2年5月、我が国は「少子化社会対策大綱」を閣議決定し、基本的な目標として「希望出生率1.8」の実現を掲げていますが、コロナ過も相まってか、現実は思惑とは裏腹な方向に進んでいます。
(コロナ過の影響で、過去の推計と比較して出生数が下振れ、死亡数が上触れしていることが確認できます。)

「人口動態統計(概数)」の発表に先立って、4月26日に「日本の将来推計人口(令和5年推計)」が発表されています。こちらの推計では、我が国の総人口は、令和2(2020)年国勢調査による1 億 2,615 万人が 2070 年には 8,700 万人に減少し(出生中位・死亡中位推計)、総人口に占める 65 歳以上人口は2020年の3,603万人から2070年には3,367万人へと減少しますが、高齢化率は2020 年の 28.6%から 2070 年には 38.7%へと上昇すると見込んでいます。(図1)

(図1)年齢3区分別人口の推移

2020年 2070年 増減割合
総人口 12,615万人 8,700万人 △31.0%
0~14歳人口 1,503万人(11.9%) 797万人(9.2%) △47.0%
15~64歳人口 7,509万人(59.5%) 4,535万人(52.1%) △39.6%
65歳以上人口 3,603万人(28.6%) 3,367万人(38.7%) △6.6%

 

65歳以上人口(老年人口)が微減に留まるのに対し、15~64歳人口(生産年齢人口)が△39.6%と激減します。これを65歳以上人口との比率で見てみますと、2020年はほぼ2.1対1であるのに対し、2070年には約1.3対1となります。1960年には現役世代およそ11人で高齢者1人を支えており、胴上げ型社会と言われていました。

いまや現役世代3人で高齢者1人を支える騎馬戦型社会を既に通り越し、現役世代2人で高齢者1人を
支えている現状ですが、社会保障制度のいたるところにほころびが目立ち始め、制度の持続可能性に疑問符が付き始めています。約50年後の現役世代1.3人で高齢者1人を支える社会はもはや想像するのが困難で、今とは全く違った形の社会保障制度となっている可能性があります。

社会保障制度は社会保険、社会福祉、公的扶助、保健医療・公衆衛生の4つの柱で成り立っています。社会福祉法人は言うまでもなく、4つの柱の中の社会福祉を主役となって担う立場の法人ですが、今後経営環境の激変に適応していくことが求められそうです。安定した事業継続のために、経営力強化に取り組むことは言うまでもありませんが、制度の変更など経営環境の変化に素早く対応するために、情報収集のアンテナを常に張り巡らせておくことも必要かもしれません。