11月11日に開催された財務省・財政制度等審議会財政制度分科会の中で、障害福祉サービスの改革の必要性が議論されました。
【背景】
●障害福祉サービス等の総費用額(=自立支援給付費(公費負担)+利用者負担)は、利用者の増加や一人当たり利用額の増加により、直近10年間で約2倍に増加しています。
●利用者負担割合は他のサービスと比べても僅少であり、医療・介護保険制度にも増して障害福祉サービス等報酬(=サービス料金)の上昇や利用量の増加による負担増を利用者が感じにくく、供給サイドである事業所の増加に応じて総費用額が増加しやすい構造となっています。こうした中、サービスの質の確保と総費用額の抑制を両立し、制度の持続可能性をどのように確保していくかが大きな課題となっています。
【障害者福祉サービスの類型別の状況】
●障害福祉サービスは、従来、施設系や日中活動系の割合が高かったのですが、昨今、就労系や居住支援系の割合が増加しています。(障害福祉サービスの総費用の伸びに対する寄与度も大きい。)
●こうした総費用額の伸びが大きいサービスでは、営利事業所数の伸びも大きくなっています。
【障害福祉サービスの総費用額の増加要因】
●近年の障害福祉サービスの総費用額の伸びを分析すると、過去10年間、利用者数の増加に加えて一人当たり総費用額も増加しています。
●更に2024年度は総費用額が急上昇(+11.3%)していますが、その主な要因は、2024年度の障害福祉等サービス報酬(サービス料金)改定(+1.12%)を大きく上回る一人当たり費用額の伸びとなっています。
【障害福祉分野の職員の処遇改善】
●経済・物価動向が変化する中で、障害福祉分野の職員の処遇改善は喫緊の課題となっています。
●2024年には、福祉・介護職員の基本給等で5.3%、一時金等を含む平均給与額で6.5%の賃上げ(定期昇給込み)が実現する一方で、1事業所当たりの総費用額(=自立支援給付と利用者負担の合計であり、施設・事業所の収益の殆どを占める)は、2024年度において7.7%増加しています。
【障害福祉サービスの質の確保】
●障害福祉サービスの事業所数が増加する中で、虐待件数も10年間で約4.5倍に増加しています。中でも、グループホームは約34倍となっており、全体の約3割を占めるに至っています。
●他方で、都道府県等による事業所への運営指導の実施率は低く(16.5%)、厚生労働省の指針で定める水準(3年に一度)に未達となっています。
●令和7年度予算執行調査に当たって自治体の意見を聴取したところ、事業所の指定等に関して自治体の権限を強化すべきと考える自治体が多く、その具体的な方法としては、指定基準の見直しや総量規制等を掲げる自治体が多数ありました。
【グループホームの指定基準の見直しについて】
●介護保険制度の認知症グループホームでは各職務について要件が定められている一方で、障害福祉サービスのグループホームにおいては、一部の職務(サービス管理責任者等)を除き、資格や実務経験、研修受講等の要件が定められていません。
●また、他の障害福祉サービスと比較しても、管理者に要件がない点や、資格等の要件があるサービス管理責任者に常勤が求められていないなど、指定基準は緩やかに設定されています。
●実際に、資格や実務経験を有さない従事者が多いことが明らかになっており、こうした資格・職務経験等の欠如が、安易な事業参入やサービスの質の低下、利用者とのトラブルの原因となっているとの指摘があります。
【グループホームの総量規制について】
●グループホームについては、事業所(特に営利法人)数が急増している中、支援の質の低下が懸念されるといった指摘がなされている一方、現状、総量規制の対象サービスとなっていませんが、地方自治体からは対象化を求める声があります。
●総量規制にあたり参照されるサービス提供量の「見込み」については、過去の変化率(実績)により定めている自治体が多い状況ですが、伸び率の高いサービスについては、仮に総量規制を導入したとしても、伸び率の抑制が効きにくい状況があります。
詳しくは以下のリンク先からご確認ください。