独立行政法人福祉医療機構から表題のレポートが発表されています。機構では毎年度、融資先の認知症高齢者グループホームの経営状況について報告を受けています。本レポートでは、それらの報告を基に2023 年度決算に係る経営状況について分析を行っています。
サービス活動増減差額比率はおおむね横ばいで推移
➢ 認知症高齢者グループホームの経営状況
●利用率は低下するも、利用者単価の上昇により、サービス活動増減差額比率は横ばい
▪2023 年度のサービス活動収益対サービス活動増減差額比率は、2022 年度から
0.3 ポイント上昇し 3.7%。
▪利用率は 94.5%と 0.3 ポイント低下。待機登録者数は0.5 人減少しており、
全体的に利用者の確保に苦慮している様子がうかがえる。
▪利用者 1 人 1 日当たりサービス活動収益は、13,824 円と 102 円上昇。
この要因として、利用者負担額や加算の算定率の上昇が挙げられる。
▪サービス活動収益対人件費率は 69.4%と 0.2 ポイント上昇。
これは、従事者 1 人当たり人件費が 67 千円上昇したことが一因と思われる。
▪サービス活動収益対経費率は 0.4 ポイント低下しており、内訳をみると
サービス活動収益対水道光熱費率が 0.6 ポイント低下。
▪経費全体としては、物価高騰の影響を受けているものの「電気・ガス価格激変
緩和対策事業」の影響もあり、2022 年度比では一時的に低下したものと推測される。
➢ 看取りの体制整備有無別の経営状況
●看取りの体制整備状況によって、利用率や要介護度への影響が生じている可能性あり
▪利用率(入居率)は「体制整備なし」が 93.6%であるのに対し、「体制整備あり」は
94.7%と 1.1ポイント高かった。また、「体制整備あり」は、看取り介護加算の算定率や
要介護度が高いこともあり、利用者単価に 670 円の差が生じた。
▪「体制整備あり」は利用率および要介護度が高い傾向があり、加えて看取り介護加算の
算定が収益確保に寄与していることもあり、サービス活動増減差額比率をみると、
1.9 ポイントの差がみられた。
➢ ユニット数別の経営状況
●ユニット数が多いほど利用者単価が高く、サービス活動増減差額比率が高い傾向
▪サービス活動増減差額比率および経常収益対経常増減差額比率は、ユニット数が多いほど
高くなる傾向が見られる。
▪利用率は、「1 ユニット」は 94.6%、「2ユニット」は 94.4%、「3 ユニット以上」は 92.3%。
▪利用者単価は、「3 ユニット以上」が 14,124 円ともっとも高い。
▪ユニット数別に加算の算定状況を確認したところ、看取り介護加算や栄養管理体制加算、
口腔衛生管理体制加算などで、ユニット数が多いほど算定率が高くなる傾向がみられた。
▪経費率はユニット数が多くなるほど、高くなっている。
▪業務委託費率について、ユニット数別に各業務の委託状況を確認すると、給食業務、清掃業務、
洗濯業務では「3 ユニット以上」がもっとも委託割合が高かった。ユニット数が多い施設に
とっては、一部の業務を委託したほうが効率的という考えもあるのかもしれない。
▪地代家賃率には、賃借物件で運営する施設の割合が関係しているが、ユニット数が多いほど、
土地・建物の賃借割合が高くなっていた。
➢ 黒字・赤字施設別の経営状況
●赤字施設はユニット数にかかわらず利用率が低いことから、収益の確保に課題
▪利用率は、ユニット数に関係なく、赤字施設のほうが黒字施設よりも低かった。
なかでも、「3 ユニット以上」は 3 区分でもっとも利用率の差が大きく、
待機登録者数も赤字施設のほうが 2.5 人少なかった。
▪費用面について見ると、人件費率が黒字施設・赤字施設の間で 10 ポイントを超えるなど
差が大きい。この要因として、従事者 1 人当たり人件費が関係しているが、
それ以外にも赤字施設は利用者数が少ないにもかかわらず、1 施設当たり従事者数が
多いことが挙げられる。これによって、利用者 10 人当たり従事者数に 0.6~1.0 人程度の
差が生じている。赤字施設においては利用者と従事者のバランスをいかに是正するかが
ポイントとなる。
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