2025年1月14日~1月17日に開催しましたセミナー「“ICT活用”は社会福祉法人の本部事務局に何をもたらすのか」では、辻・本郷 ITコンサルティング株式会社の菊池様をお招きし、本部事務局のICT活用として会計業務と人事労務業務に焦点を当ててご講演いただきました。
会計業務・人事労務業務において効率化を行いたい、システムを検討しているなどのお悩みがある方はぜひご参考になさってください。
目次
本セミナーの概要
本セミナーでは、本部事務局にICT活用が必要とされる背景に始まり、業務効率化や生産性向上の成果をどのように評価していくのか(KPI)といった効果検証の観点についてもご説明いただきました。
業務効率化において目指すべきポイントとは
ICTを活用することで、すべての業務が省力化し効率を図れるわけではありません。人材不足やサービスの差別化などの経営課題において、ICT活用がどの業務で効果を発揮させられるのかを考える必要があります。
量的な効率化と質の向上
量的な効率化で目指すことは、業務の工数を減らし捻出された時間を、これまで着手できていなかった業務に当てることです。一方、質の向上においては福祉サービスに直結しない時間を減らすことで、利用者との交流など福祉サービスに直結する時間を増やすことをいいます。
コア業務に注力する
会計担当者や人事担当者が、本来時間を割かなければならない業務に対し時間を使えるよう効率化を図ります。例えば、会計担当者であれば予算管理、人事担当者であれば法人の経営方針に合った人事評価制度を構築する、などが挙げられます。
会計業務と人事労務業務に起こること
会計業務においては、クラウド会計を活用することでリアルタイムに状況が確認できるほか、安全な環境でデータを保存できます。また、金融機関の口座連携機能やAI-OCRを活用することで、作業工数を削減できます。
人事労務業務においては、人事システム・給与計算システム・勤怠管理システムが相互連携が実現できると、職員の入退社からシフト作成、勤怠データの管理など一元管理をすることができます。また、給与明細や年末調整が電子化できると工数・費用の削減が可能です。
アンケート結果からみる現場の課題
セミナー受講後にアンケートを実施しました。受講者からは下記のような回答があり、同じような悩みを抱える社会福祉法人の担当者もいるのではないでしょうか。
会計業務において課題に感じていることは?
- 業務の属人化が顕著であり、担当者の退職や休職したときに業務が回らなくなるのではないかと感じている
- 実務者が今の事務のやり方に慣れており、変化を好まない
- システムを導入しているが、一部の機能しか使いこなせていない
- 法人規模が小さいため、クラウド会計を導入することでメリットがあるか分からない
- ITに抵抗のある方に対して、どのように導入支援を進めていけばよいか分からない
- 事業所が多く、拠点区分毎の按分計算の作業量も多いため、それに対応できるシステムを探すことが大変だと感じている
- 本部事務所の効率化は実現できたが、施設職員の手間が増えてしまった、ということにならないか不安である
人事労務業務において課題に感じていることは?
- 事業所ごとに使用している勤怠システムが異なるため、給与ソフトや会計ソフトとも連動していない
- システム料金が高く、予算が割けない
- 給与計算・勤怠管理・人事管理(タレントマネジメント)システムが導入できていない
- 育児、介護などの時短勤務や休業など、様々な勤務形態で働く職員がいるため、手続きが煩雑化している
- 勤怠をタイムカード等の紙で管理しているため、集計が手作業でかなり時間がとられてしまう
- 導入しているシステムをより使いこなすため、連携できるシステムを知りたい
セミナーを終えて
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本セミナーを受講して、「何を省力化し何に注力すべきかが明確にできた」「ICT活用のメリット・デメリットが整理されており、分かりやすかった」などの感想をいただきました。着手できる業務から効率化を図ってみてはいかがでしょうか。
システムを検討する前に実施するとよいこと
業務の洗い出しと整理
現在の業務が本当に必要なものなのか、無駄な業務を行っていないかなど、業務の洗い出しと整理を行いましょう。「担当者のコミュニケーション不足により、同じような業務を実は行っていた」「これまでのルールに従っていただけでやらなくてよい業務をやっていた」など、システムを導入しなくても業務の効率化を図れることがあるかもしれません。
次に、業務の標準化
業務や部署の境目をなくす理想的な業務フローを検討します。業務を分類して、人が業務を行った方がよい部分と、システムを導入した方がよい部分を見極めます。業務の標準化を検討することで、属人化対策にも繋がります。
システム導入の検討
業務全体を見たうえで、自法人に合ったシステムを検討します。法人全体にとって最適な選択を行うために、業務全体を理解している方が指揮を執るとよろしいかと思います。また法人内で検討が進まない場合は、システム会社や専門家等に相談されてみてはいかがでしょうか。
最後に
最後までお読みいただきありがとうございました。福祉経営研究機構では、相談内容に応じて、専門事務所をご紹介しております。話を聞いてみたい、どこに相談したらよいか分からない、なども大歓迎です。お気軽に「お問い合わせ」よりご連絡ください。