(前回からの続き)
聞き手 農福連携等について、現在課題と考えていることがありますか。
榊原理事長 まずは障がい者等の社会的弱者の地域農業や経済活動への参加促進を図る上で、貧困ビジネスや権利侵害などに利用されない『健全性』が厳重に確保される制度や仕組みを構築することが急がれます。
それから昨今、障がい者遠隔地雇用と称し、主たる目的が農業生産ではなく、障がい者雇用代行業のような労働や生産実態に基づかない事業体が見られますが、そのような事業体によって本来あるべき障がい者雇用が歪められたり、農福連携の趣旨から逸脱させないような制度設計が必要です。
聞き手 榊原理事長は、全国の農福連携等に関わる団体を包括するプラットフォームとして設立された一般社団法人日本農福連携協会の代表理事も務められていますが、こちらの団体では現在どのようなことに取り組まれていらっしゃいますか。
榊原理事長 まず一点目として、農林水産省事業として取り組んでいるものが挙げられます。たとえば、農福連携等に取り組む事業所の運営に関する評価体系の調査・分析事業、農福連携事業に取り組む事業所のデータベース化、農福連携等の体験ツアーモデル構築事業などです。
それから二点目として、その他事業として、JAグループ・日本郵便との販路拡大事業、法務省との刑務所出所者等の立ち直り支援事業、農園型障がい者雇用問題に関する研究事業を行っています。
さらに三点目として、マルシェ等の開催を行っています。無印良品(MUJI新宿店とのコラボ)、日本郵便の郵便局での無人販売、法務省主催の矯正展での販売、立ち直り応援基金(日本更生保護協会)の活動等です。
それから今年はコロナ感染拡大のため延期していた「農福連携全国フォーラム」を東日本大震災からの復興が進む宮城県石巻市において開催しました。行政機関・企業・福祉関係者が集まり、パネルディスカッション・スタディツアー・農福関連物産展等を開催し、農福連携等の取り組みのさらなる推進と充実を図りました。
聞き手 本日はありがとうございました。この取材を通して、私自身の農福連携等に関する知識がまだまだ表面的なものであったことを改めて痛感しました。本日榊原理事長から直接お話を伺うことで、障がい者が置かれている状況の過酷さを再認識し、そして農福連携等を通して障がい者の『尊厳的な自立』が実現可能であり、そのことをテーマとして榊原理事長がこの事業に取り組んでいらっしゃることを良く理解しました。
福祉経営研究機構は福祉の向上という公益の増進に努める団体ですが、今後微力ながらも農福連携等という素晴らしい取り組みの裾野を広げるための一助になりたいと強く感じました。
社会福祉法人青葉仁会様の今後の益々のご発展をお祈りしております。
本日はありがとうございました。
榊原理事長 こちらこそありがとうございました。
写真:取材にお伺いした同法人が運営されるカントリーレストラン・ハーブクラブ〔就労継続
支援B型事業所〕(写真左)。
木材を基調としたスタイリッシュな外観で、レストラン一階には薪ストーブ(写真中央)が存在感たっぷりに鎮座しています。お伺いした日は12月上旬でしたが、店内はまさに春のようなぽかぽか陽気でした。
レストランは高い天井のゆったりした空間が心地良く、年間4万人近くが訪れる人気スポットです。薪ストーブで焼き上げたスペアリブを使った石窯ランチやオリジナルカレー、大きなピザ窯(写真右)で焼き上げたピザやパスタ等様々なメニューを、地元野菜をふんだんに使って提供しています。
近くに行かれた際に、お立ち寄りされてみてはいかがでしょうか。